2003年12月11日
遠野秋彦の庵創作メモ total 2398 count

「鬼と一緒に大暴れ編」公開に際して、桃太郎の物語についての中間的な思い

Written By: 遠野秋彦連絡先

 やは、遠野の創作メモだ。

 今日公開された物語異説桃太郎・鬼と一緒に大暴れ編は、前に書いた創作メモ桃太郎に新たな可能性は残されているか?と関連するものだ。

 しかし、これが遠野なりの桃太郎に関する結論の総決算、というわけでもない。あくまで、実験的に書かれた桃太郎に関する切り口の1つという感じの位置づけになる。というか、資料の本を読んだりする作業もずっと中断中で、あまり進んでいないのも現状だったりするのだ。(困った困った)

 実際、現在流布している桃太郎の話は、明治以後に固まったストーリーでしかなく、より原始的な桃太郎の話はかなり違っていたりするらしい。たとえば、川に流れてきた桃をお爺さんとお婆さんが食べてしまうというパターンがあるらしい。そして、お爺さんとお婆さんは若返って子作りして生まれたのが桃太郎という訳である。こういうパターンを採用して物語を組み立てると、いろいろ面白いことが出来そうではある。だが、それが読者に分かるのかという問題があるために、ためらいを感じてしまう。(桃から生まれない桃太郎の物語が冗談としてしか受け入れられないとすると、作品構成上の制約と成りかねない。そういえば、桃太郎侍は、自分を桃から生まれた桃太郎と称しているが、もし桃から生まれない桃太郎の話が江戸時代に流布していたとすれば、桃太郎侍の台詞は成立しないことになるかもしれない。よく資料を読み直さないと確実なことは何も言えないけれど)

 実は、今回の物語異説桃太郎・鬼と一緒に大暴れ編にしても、神社が海を通航する船から通行税を取っているというような、歴史の本に書いてあるトピックを知らないと、どこが面白いのか分からないまま読み終わってしまうのではないかという懸念が無いわけではない。

 その点で、まだまだ作品を改善すべき領域、遠野が精進すべき領域が多く残されている感がある。

 作品は、分かりやすくあるべきである。